はみ出し日記

Twitterに載らない長文の意見や考えをまとめる際に利用します

直近(過去半年)のゲーム事情

今回はここ半年ほどで、ちまちまやってきたゲームについて書いていこうと思います。

 

例によってツイッター以外で文章をまとめる機会がほとんどなかったため、リハビリも兼ねています。ただそれ以上にゲームのセーブデータを数年後にロードし直しても、順序だてたエスコートもなく瞬間冷凍されていた世界に放り出されるだけで、当時の心境や感想までリメインしている訳ではないことを最近感じていて、日記のように感情の記録をしておくことは必要かなと思った次第です。

 

就活が始まった当初は周りを見回して「自分も一生懸命にやらねば」等と思いつつ、でしたが、やはり自分の精神を支えているのはそう言った真面目な感情だけではないようで、steamのセールを見つけては小さめの規模の作品をぽちぽちと遊んできました。

 

前置きが長くなりました。早速書いていきます。

 

War,War never changes.

Fall Out 4

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最初に紹介するのはこちら、オープンワールドRPGの大手ベセスダが2015年に発表した作品。

題名からして「放射性降下物」を意味している本作は、核戦争後荒廃したアメリカを舞台にしたRPGです。4作目となる本作は開戦直後に冷凍され200年そのまま放置された主人公が連れ去られた息子を探すというストーリーになっていました。

 

今回の物語を構成するうえで鍵を握っていたのは「人造人間」です。

メインストーリーを進めていくと規模も目的もわからない謎の集団「インスティチュート」が、生身の人間と寸分たがわぬ人造人間を、本物とすり替える形で送り込んできているらしいことが分かってきます。両者の違いを判別する術はなく、完全に死亡してから初めてわかるほど精巧な作りであるため、人々は身近な人間や自分自身がすり替えられた”偽物”なのではないかと怯え、インスティチュートを敵視しています。

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(ストーリー中盤で加入する探偵ニック・ヴァレンタイン。一見してそれと分かる旧世代の人造人間だが、その能力と人望により例外的に住民からは慕われているという設定。)

 

人造人間は冷徹な機械人形であり、地上から抹消しなければならないと意気込む武装組織「ブラザーオブスチール(BOS)」、人造人間に自我を認めインスティチュートの支配から解放してあげるべきだと意気込む技術者集団「レイルロード」。この三つ巴の紛争に主人公は介入していくことになります。なぜなら自身の息子がまさにインスティチュートに連れ去られているからです。

 

このテーマが自分は非常に面白かったです。戦闘バランス・UIの向上や、過去作になかった爆心地の探索なども魅力を増す一因でしたが、何よりテーマが良かった。

物語終盤にインスティチュートがすり替えた人間の名簿が発見されるんですが、その中にそれまで人造人間を根絶やしにしてやると息巻いていたBOS高官の名前があるんですね。BOSの誰しもが困惑する中、最高指揮官は彼を更迭し、処刑しようとします。

物語を進めるにつれて、人造人間と生身の人間を隔てるものはほぼ無いといっても過言ではないことが徐々に判明してくる。それが分かっていつつも頑なに否定し殲滅を掲げるBOSの指揮官は見ていて痛々しいです。序盤にあった人造人間から人々を守るという錦の御旗が消滅していくのが分かっていながら、その形骸化した理念を簡単には取り下げられない。

 

さらに面白かったのは、非公式wikiにおいてゲーム内の「人造人間」に対する存在しないデメリットについて書きこまれていたことでした。

本作では自身の住まう町を自由にカスタマイズできる機能があり、丁寧に整備すれば住民の満足度が上昇するように設定されています。しかし住民の中に人造人間が紛れ込んでいる場合、この満足度が低下していくという内容の書き込みがあり、ある程度それが信じられていたのです。

人造人間=得体のしれないもの≒悪性という不安や疑念がプレイヤーの側まで浸食してきているのが興味深かったと同時に、(それまでの価値観において)異分子だと感じる存在が自分たちの社会に溶け込もうとしてきたとき、我々は理性的な判断を下し柔軟に対応することが果たして出来るんだろうか、ということをとても考えさせらました。

 


映画『イヴの時間』予告編

容姿の似通ったアンドロイドと人間の交流を描いたアニメ作品で「イヴの時間」というものもあります(こちらは他者の違いを認め合うという部分に重点が置かれていましたが)。

これらの作品は他者への心理的な異分子感を理性によって再検討し、改革していくことについて、考えるきっかけになるのではないかと感じました。あらゆる場所で既存の区別を差別であると再検討することが叫ばれている現代であれば、なおさら。

 

なお本シリーズではこれまでにも、放射線を浴びた結果ヒトが突然変異したグールという存在も登場します。彼らは放射線への高い耐性を得た代わりにグロテスクな外見と、将来的には正気を失い人間を襲うようになるかもしれない性質をもち、地域によっては厳しい差別を受けています。しかしグールにも人格者や卓越した戦闘技術を持つ者はいるほか、世紀末な環境からヒトの中にも悪逆非道の道へ走る者も少なくないことなどを含めれば、結局は「ヒトと同じ」とも言えます。移民の国であるアメリカの未来を舞台にしている以上、こうした表現には何かしらの意図があるように思っています。

 


Fallout 4 - Official Trailer

といろいろ書いたものの、何より自分は廃墟溢れるポストアプカリプスの世界観がかなり好みというのが大きいです。Falloutシリーズのプレイは2作目で新参も良いところですが、人の香りがする廃墟の演出が何よりも自分の琴線に触れていると感じています。

 

 

 

次です。

人生は選択肢だらけ

 でも もし 

  選び直すことができたら

Life is Strange

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アドベンチャーゲームという枠に分類される(らしい)作品で、ニコニコの淫夢実況でダイマされて関心を持っていたところ、なぜかPS4版の半額の値でsteam版が購入できたので買ってしまいました。

オレゴン州の田舎町で写真を学ぶ主人公のマックス(写真左)が、5年ぶりに再会した幼馴染のクロエ(写真右)と共に失踪した女学生を探すというストーリーなのですが、マックスは物語開始直後に時間遡行の能力を手に入れます。

幼馴染や同級生との人間関係に悩むマックスは、時間を巻き戻しながら思い通りの結果を得ようと努力しますが…という感じ。

少しぼかしたようなキャラクターモデリングや陰影のハッキリしたオブジェクト配置など、雰囲気を重視した作風になっていて、切った張ったのアクションはほとんどありません。穏やかなBGM(どの曲も抜群に良い)と合わせて、ステージを歩いているだけでかなり情緒に訴える内容になっていたように思います。

物語を構成する重要な要素の一つである時間遡行の能力も、STEINS;GATEやアニメ版時をかける少女のようなメカニズムに関する考察は行われず、舞台装置としてマックスを翻弄する形で出現します。その点が非常に詩的で、メインテーマである人間関係の部分に集中することができるようになっていました。

 

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本作の魅力は何と言っても人間描写で、5年ぶりに再会した幼馴染のクロエとマックスとのやり取りが目玉です。他の人間はこの二人をクローズアップするために消費されているという感覚すらあるくらい。

二人は5年前互いに認め合う親友でしたが、マックスは引っ越しを機にクロエと連絡をほとんど取らなくなってしまいます。その間クロエは信頼していた父親を事故で失い、母親の再婚相手とも上手くいかないことから自暴自棄になってしまいます。そんな折出会った同級生のレイチェルがクロエの心の支えだったのですが、彼女が本編開始時点で行方不明。クロエにとっては直近の親友がいなくなると同時に、昔の幼馴染と偶然再会した形になります。

 

この三名【マックス(主人公)―クロエ(幼馴染)―レイチェル(クロエの親友)】の人間模様がストーリーが進むにつれて様々に変容し揺れ動きます。主人公はクロエから伝え聞く「レイチェル」なる人物に憧れとも嫉妬ともつかない感情を抱くのですが、一方でレイチェルが見つからない以上クロエを大切にできるのは自分しかいないと使命感に燃える。

最近流行りの””””百合””””って奴に近いんじゃないでしょうか。こうして生まれた”””複雑な感情”””と時間遡行の能力は引っ込み思案だったマックスにも徐々に変化を及ぼします。彼女自身の成長も本作の見どころの一つでしょう。


ライフ イズ ストレンジ: シネマティックトレーラー

登場人物が皆超人的な美人だったりイケメンではないというのも、表層的なモデルではなく物語に没入することを手助けしていたように思います。彼女らは特別に収集された能力者ではなく、片田舎の高校生であることを念押ししてくるというか。

 

ただ雰囲気ゲーの宿命というかシステム的な部分で問題点は色々感じました。選択肢とエンディングとの相関関係が弱いとか、時間遡行能力に関する追及が薄いために主人公たちの言動がどこか白々しいとか。

 

とはいえそういった点はゲーム自体の詩的な雰囲気を高める長所でもあります。物語は行方不明のレイチェルを探しつつ、4日後にやってくる巨大竜巻から町をどう守るかに次第にシフトしていくのですがバタフライ効果の有名な例として持ち出される「蝶の羽ばたきが嵐になる」の流用だと気付いてからは、このゲームが彼女たちの心情をどう脚色して描くかという部分をひたすら追求したものなんだと納得して解決しました。

 

本作の続編でありクロエとレイチェルの邂逅を扱った「Life is Strage before storm」 も忘れないうちにプレイしたいのですが、百合の”””””人間関係”””””は傍から見ているだけでも疲れてくるので、様子見中です。

 

 

 

次です。

言葉なきナラティブ

Hyper Light Drifter

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荒廃した世界、ゼルダジブリ調のドット絵グラフィック、静謐且つ哀愁の漂うBGM、文字を使用しない独自のUIなどが組み合わさり独自の世界観を放つ作品としてインディーズゲームでも高い評価を受けている作品です。

 

ゲーム自体はそれほど規模が大きいものではないのです(通しで10時間くらい?)。戦闘が少し難しい場面があるほかは、世界観に浸るゲームと言ってよいと思います。値段も2000円ほどで手ごろ。廃墟好きにもお勧めできます。何しろどこへ行っても廃墟なので。

 

シンプルな操作性と技量重視の戦闘システムの関係でyoutubeなどにRTA動画など数多く上がっています。そういった楽しみ方もできるというのは、良いですよね。

 

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 このゲームが世界観を重視している証左として文字の不使用が挙げられます。ではNPCとどうやって意思疎通を図るかと言えば、数枚の絵を紙芝居のように見せられることで済まされます。どうやら主人公とNPCは「会話」自体は出来ているようなのです。そういったやりとりからは、彼らが”文字のない社会”に住んでいることを感じさせられます。

 

ゲーム内にて世界の真ん中にあるホームタウンには東西南北それぞれの敵の拠点から逃げ出してきた人々が(動物たち?)が暮らしています。彼らの住まう町はある程度整然としていますが、文字の無い彼らの営みは歴史を生み出せません。世界に何が起こったのか、なぜ敵が拠点を制圧しているのか、物語の根幹を知りたければ拠点の各地に散在しているモノリスから文字を読み取る必要があります。これらの文字はまどマギの魔女文字のようなもので、別途翻訳が必要なものですが、書かれている内容は設定を深く理解する上では必要不可欠なものです。

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しかしこのモノリスは茂みの先など普通にプレイしている限り見つけにくい場所ばかりに配置してあります。初見ではそのほとんどをスルーしてゲームをクリアしてしまうのではないでしょうか。ただそれもまた徹底して作り上げた世界観織り込み済みであると自分は感じています。伝聞によって教わった敵をよく分からないまま倒してしまう。そこに本作が抱える寂寞具合が如実に反映されているのではないでしょうか。

 

というのも物語を進めていくにつれて本作の主人公がゼルダの伝説における選ばれた「勇者」のようなものではなく、これまで何人も送り込まれては失敗(死亡)してきた執行者の一人であることが分かってくるからです。使い捨てのコマである主人公は歴史を知る必要などなく、モノリスの文字が読めなくて当然ともいえます。でもそんな主人公が懸命に世界を回り、ダンジョンを切り拓いていくからこそ、廃墟だらけのステージが映えてくる。そんなちょっと拗れたアクションゲームになっています。

 


Hyper Light Drifter - Release Trailer

PV見ただけで分かると思いますが、ピアノベースのBGMがとても良いのでSteamで買う方はOST込での購入をお勧めします。今回紹介しているゲームのなかでも3番目くらいに音楽が好きです。2番は次に、1番は最後に紹介します。

 

 

 

次です。

「船」の帆を広げ、風を受けて進め。

FAR: Lone Sails

まずはこちらのPVをご覧ください。


 

FAR: Lone Sails - Gameplay Trailer

今年の5月に発売された新作で95%雰囲気ゲーです。残り5%は厨房管理のミニゲームという感じでそれほど難しくありません。当然難易度設定も無し。

終末世界にて主人公の女の子(?)が車輪の付いた帆船に乗り込み、ひたすら前へと進んでいくだけの内容です。こちらもインディーズゲーム。レビューには映画を見ているような感じというものもあったのですが、まさしくそのような印象を受ける内容です。

またポストアプカリプス廃墟ゲーかよと思われるかもですが、またです(無反省)。

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こういう廃墟ゲーは緩急の付け方が難しくて、オブジェクトが無さ過ぎてもありすぎても魅力を損ないます。ヒトの痕跡が全くないサバンナのような平原をひたすら進むと、飽きてきてしまいますし、人の痕跡があり過ぎると廃墟探索ではなく空き巣のような感覚に陥ってしまう。本作はBGMの挿入タイミングや昼夜の入れ替わりのタイミングなど演出的な部分も含めて、構成がとても練られていたように感じます。

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かつてのFlashゲーム(顔風船など)を想起させるような機械のギミックなどもあり、少し懐かしいような感覚にも陥りました。

また基本的にセリフが登場しないので、主人公の心情を勝手に想像できるのも良かった。

本作における船は彼女にとって世界を切り裂いて進む希望であると同時に、離れては生きられない檻でもあります。しかしそれ以上に一人ぼっちの彼女にとって、旅のさなかに見つけたラジオやぬいぐるみなど、自らの行動・足跡を照明する物品を補完する「家」としての機能が徐々に付与されていきます。

 

そしてその家を保持するために、本当に必要になった時には思い出すらも薪にくべて前進しなければならない(あらゆるオブジェクトを燃料化できるため)、そんな悲壮感が漂う場面もあります。最終盤この船がXXXしてしまったときには思わず声を上げてしまいました。本作においてプレイヤーは船を俯瞰視点、神の視点で見続ける存在ではあるのですが、船≒家に対する愛着を共有して思わずそういう気持ちになってしまうほどに没入させてくる作品です。

 

問題点として、初見でも100分ほどで終わってしまうボリュームの少なさを挙げる方も見かけましたが、演出・BGMだけで元は取れているのではないかと自分は考えています。あまりにも雰囲気とプレイ感が良すぎて、購入日には二周続けて遊んでしまうほどでした。

 

 

 

次です。

ムシ達の王とその器

Hollow Knight

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悪魔城ドラキュラにダークソウルのテイストを加えた2Dアクションアドベンチャーです。ストーリーは有ってないようなものなんですが、荒廃した虫たちの王国を記憶の無い主人公が探検し、その荒廃の元凶に迫っていくという感じです。

戦闘やキャラクター操作も複雑なところは殆どなく、NPCを誤って攻撃してしまうということもありません。ボス撃破やマップ開拓によって新たな能力を手に入れ、それまで行けなかった部分を探索するというのもわかりやすい。

 

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本作の目新しいところと言えば敵も味方も登場するものすべてが昆虫をモチーフにしているところでしょうか。ちょっとデフォルメされていて可愛いんだけど、必要以上にヒトに寄せていないキャラデザが秀逸で、穴倉のように入り組んだフィールドと合わせて世界観の浸透に一役買っています。

 

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アリの巣のような広大な地下空間は複雑に絡み合った廃墟で、現在地点を確認せずに目的地へと移動するのはほぼ不可能です。本作では行く先々で地図屋にマップを更新してもらうことが、迷子にならないために必要となります。壊せる壁や床・天井なども大量に配置されており、マッピングが好きな人にはたまらないでしょう。

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このゲームのすごいところは独自開発の団体がクラウドファンディングで資金を調達し、グラフィックの全てを「手書き」で行っているところ。

故にクオリティの割に値段がとても安い。難易度こそ高いと評判ですが、やり込みやDLCまで考慮しなければ中の上くらいの印象。時間さえかければエンディングまでは到達できると思います。PS4やSwitchへの移植も行われており、追加のDLCも開発中とのことです。クラウドファンディングによるゲーム開発には詐欺まがいのようなものもあると聞きますが、team cerryは今回の仕事でとてつもなく名を挙げたでしょう。

自身を強化しながら広大なマップを探検する、悪魔城ドラキュラメトロイドシリーズが好きな方にはお勧めできる作品になっています。音楽も良い。


Hollow Knight - Release Trailer

 

 

次です。

[N/A]大都市の生と死

Cities Skylines

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フィンランドのColossal Order開発の都市開発シミュレーションゲーム、度重なるアップデートにより高層ビル街から農村都市まで幅広いまちづくりが可能な作品になっています。土地の修正によって山や海に開拓を行ったり、些細な部分にも拘ることでロールプレイまで可能です。すごい。

序盤は町の管理に関する知識が不十分で、水道管を廃棄物処理場の下に通し上水に細菌が入り込むといった実際の街でやろうものなら失脚どころの騒ぎではないポカ*を行ったりしましたが、徐々に慣れてくると市民からの不満も減ってきました。(それでも最初の町は勝手が分からない内に採算が破綻して消滅しました)

*これと似た状況の地方都市米ミシガン州フリントが主題のドキュメンタリー『フリント・タウン』がNetflixで公開されています。おすすめ。

 

町は発展してくると人がどんどん外部から移住してきて、規模も拡張されていきます。しかしそうすると今度は彼らの動きを制御するのが面倒になってくるでしょう。住民の動きを管轄するAIは簡単なもののようで、公共交通機関があれば「最も近い駅の手段を利用する」ようです。各機関の混雑具合やそれに基づく目的地への到達時間の比較などは行いません。

これが何をもたらすかというと、一台に30人しか乗れないバス停で1000人以上の人間が待っていたり、片側1車線の道路が最短距離だからといって車が殺到したり。おおよそ普通の町では起きないような問題が発生します。ゲーム内の住民は人間というより知能のある水のようなイメージ。彼らの導線をどう確保するか試行錯誤を繰り返すことが町の拡張には必須となります。

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本作はシステムが複雑かつ綿密に完成されているため、プレイヤーサイドに要求されるものが多いという課題もあります。

例えばPCスペックですが町が大きくなり人口が増えるにつれて処理が増え、パソコンの挙動も徐々に怪しくなってきます。設定である程度誤魔化せるとはいえ、ゲーミング用ではないノートパソコンでの起動はお勧めできません。自分のパソコンは本作をやっていた10日くらいの期間に2回ファンが熱暴走を起こしました。

あとこちらは経験以外に解決方法がありませんが、自由度の高い街づくりにとって無計画さは命とりです。場当たり的に必要な施設を継ぎ足していくと、モリモリしたブロッコリーのような形の街になってしまいます。というか、なります。都市計画がいかに難しいかをしみじみと実感しました。PVのような整然とした都市をつくるのは並大抵のことではありません。

この二点の両立が難しい場合は素直にプレイ動画を見ましょう。(諦め)


Cities: Skylines シティーズスカイラインズ 淡路島を電車で一周の旅

 

感想としては常に賛否両論ある都市の再開発について非常に考えさせられる作品だと思いました。ニューヨークの都市開発をめぐる闘争の指揮者として有名なジェイン・ジェイコブズは、人間同士の密接なやり取りがあってこそ正常なコミュティの創成につながることを著作「アメリカ大都市の生と死」で示しました。

これはそれまでのモダニズム的な都市開発計画、つまり広い道路と大きなビルを整備してそこに人を入れれば町は勝手に発展するという思想とは大きく異なり、ごみごみした下町の価値について初めて言及したものだったのですが…

 

このゲームにおいてジェイコブズの思想は成長の足かせになるだけです。どれだけの住民に立ち退きを強いることになっても、道路を拡張し渋滞を緩和することが街自体の発展につながることが常だからです。そして本作における住民は、クリック一つで文句も言わず自宅を更地にさせてくれます。

経済的発展が住民の幸福に直結するわけではありません。しかし「人が溢れる町」を目指す時、一定区画の住民の意思を踏みにじり大規模な開発を敢行することも、的外れな選択肢ではないなというのを暗に、しかしハッキリと示してくるゲームだと思います。

 

 

次です。

パルクールと「バイター」

Dying Light

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ゾンビ要素とパルクールを混ぜた意欲作として評判の高いオープンワールドタイプのRPG。定価6000円の完全版が何を考えているのか2000円に値下げされていたため買ってしまいました。(今はまた6000円です)

主人公は自身が所属する組織GREのエージェントとして、謎のウイルスが蔓延する「ハラン市」にやってきます。町を牛耳る荒くれ集団”ライズ”の長が持つという治療薬の情報を取り返すため、そして生き残った人々の信頼を得るべく奔走するのですが…

本作の目玉の一つはパルクールという身一つで街中を駆け回るストリート色の強い競技/趣味を取り入れたことだと言われています。壁をよじ登ったり狭い隙間に滑り込んだりしてバイター(本作のゾンビ枠)と追いかけっこができたり、目的地に素早く移動したりできます。アサシンクリードにも似た高低差を生かした街の散策は、爽快であり本家のパルクールのイメージアップにも通じるモノがあります。


琉球疾走 ‐ パルクール視点動画/ParkourPOV

発売から大分経っていることもあり、多人数プレイは全く捗りませんでしたが、ランダムイベントなども多く一人で街をうろついているだけでも結構楽しかったです。

本作のもう一つの目玉はあまり言われていませんが、ゾンビではなくバイターであるという部分にあるのではないかと思っています。というのもバイターは死者かというのが本作プレイ時に常に感じたからなんですが。

バイターとは”噛むもの”=ウイルスに感染した人間であり、ぱっと見ゾンビですが部位を欠損すれば流血する(心臓が機能している)し、DLCでは人間としての意識を保った個体も登場します。

ウイルスに感染していない「生存者」の中には身近な者がバイター化したがために、自宅に幽閉している者もいたりして、バイターをどう扱うかは考えさせられました。

 

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もちろんバイターは”敵”なので、どれほど残忍に殺そうがハラン内部ではお咎めなしです。しかしそれこそ大脳の大部分が動いているとしか思えないバイターを、死者と同一視出来るかという問いは常に突きつけられていると思います。

大量のゾンビが徘徊する中を走り回るという点では似通った「デッドライジング」という作品があり、こちらの続編「デッドラ2」ではゾンビの人権を主張するCUREという団体が半ばカルト宗教のように描かれます。しかし人間の死に関する線引きについて盛んな議論が交わされている現代において、CUREの思想はズレていると断言することもできなくなってきているのではないでしょうか。創作物の中にしか存在しないとはいえ、こうしたゾンビに対して自分はどう判断するのか、その立ち位置について少し考えてみると面白いのかもしれません。

 

 

 

 

真面目に紹介するのは次で最後です。

 

きみと紡ぐ無の境地

GRANBLUE FANTASY

 

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通称グラブル、艦これ全盛期から生き延びているソシャゲ大手のひとつ。

丁度去年の今頃登録し、数度の休止を経たものの未だにちまちまやっています。

キャラパワーがシステムの不備を埋めているタイプの作品だとは思うのですが、ある意味2D時代のFFを後継作ともいわれています。(撃破した敵の消え方とかそのまんま)そのほか様々なソシャゲの良い点を取り入れて絶えず更新している点が、アクティブユーザの維持できている理由なんでしょう。

これが直近半年の中では一番プレイ時間長いと思うのですが、””無””系のゲームなので感想だけを。

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このゲームの長所であり気味の悪いところは、登場する全ての存在が善人であることです。あらゆる人種・立場の人間と即座に分かり合い、決して(人間的に)誤った選択を選ばない主人公を筆頭に、敵も味方も皆淡々と自らの求められた役割を遂行します。たまに悩みがあったかと思えば、主人公によって快刀乱麻もいいところ、綺麗さっぱり解決します。最初はそれがストレスフリーで良いなと思っていたんですが、続けているとあまりにも紋切り型な展開が繰り返され、逆に怖い。

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まあソシャゲなんてみんなそうなのかもしれませんが。

こういうあまり考えず、何かのついでにできるゲームが流行っているということはゲームですら集中して没入、注力することが出来なくなってきているという事なんでしょうか。LSDはインスタント禅だと言っていた人がいましたが、ソシャゲプレイヤーも皆実はゲームではなく脳の停止≒悟りのようなものを、潜在的に求めているからそちらに走るのかもと、本作を熱心にプレイしている社畜の知り合いを見ていると思います。

 

 

以下その他のゲームを簡単に紹介する枠

Far Cry 4

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ヒマラヤ山脈周辺と思しき山岳地帯で、民兵組織に加わった主人公が独裁者の支配地域を開放していくオープンワールド形式のRPGベトナム戦争追体験っぽいような、そうでないような。ストーリーに共感できず終盤に差し掛かったところで積んでしまいました。やり込み要素万歳なところが、さらに作業感を加速させています。プレイ感覚自体は近代兵器があり、魔法の無いSKYRIMだったのですが、どうしてこうなった。

 

 

 

Lu Bu Maker

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古代中国に転生した主人公の元に、『三国志』に登場する武将の中でも最も強く粗暴な英雄呂布が養子としてやってくる。彼女を「良い娘」に育てて、史実のような”親殺し”を回避しようという突飛な発想の育成ゲーム。「プリンセスメーカー」ならぬ「呂布メーカー」。

感想を一言でいうと子育てって難しい。全く思ったとおりの呂布に育たず、放浪したりあっさり暗殺されたりしました。なお呂布ちゃんは韓国語で話しますが、日本語字幕とニュアンスで分かるので大丈夫です。

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ちなみに呂布以外の武将も魅力的な女性として登場します…が、彼女らが呂布と親しくなるとそのまま引き抜かれ、父親である自分が殺される要因になります。

 

 

 

 

Doki Doki Literature Club


Doki Doki Literature Club! Trailer

友人からお勧めされたノベルゲ。英語原作ですが日本語化MOD含め無料で遊べます。Undertaleと比較されることが多いと聞きましたがシステムや方向性は『君と彼女と彼女の恋。』の方が近いと思います(うわべだけ見れば)。この手のゲームは何かアルことが分かってプレイすると魅力が半減してしまうので、人に勧めるのが難しいですね。

 

ゲームをするだけの気力は起きないが、何が起きるのか知りたい方はこちらをどうぞ。非常にテンポよく要点をまとめています。そしてその先の考察まで。

 

 

長くなりましたが、パソコンがトンでも記憶から忘却されてもこれで記録が残るかなと思います。かなり偏ったゲーム選出なので、お勧めできる作品ばかりというわけではないのです。ただ、どの作品も高い評価を得ているものかつ、値段も手ごろなのでsteamゲーに触れたことが無い方は、何かのきっかけにしていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公は、「Batter」(=打者)という役割を持っている。

Batterは、ある重要な任務を任されている。

Batterは、ある神聖な任務を任されている。

 

Batterを導き、その任務を達成せよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OFF

 

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最近最も感銘を受けたゲームがこれ。最後はOFFの紹介で〆させていただきます。

見ての通りRPGツクール、それも"2007”で制作されたかなり古いゲームです。フランス人のMortis Ghostさん原作で、日本語版も有志の手により無料で配布されています。

音楽と世界観が抜群に良く国内外で今なおカルト的な人気を誇ります。曖昧なストーリーや解像度の低いドット絵は多くのファンメイドを生み出しました。(海外版ゆめにっきと呼ぶ人もいる)Twitterで検索するだけでも未だに新規のファンアートが数多くヒットします。ツクール産ホラーゲームの有名どころでは青鬼やIb、ゆめにっきなどがあるかと思いますが、本作はこうした作品とはまた一線を画す出来となっています。

 


OFF - Fan game Trailer.

主人公であるBatterは「ある重要な使命」のため、プレイヤーに導かれzoneと呼ばれる世界を回ります。そして行く先々で汚れた魂を浄化し、世界をあるべき姿に戻そうとします。謎解きをしながら進むRPGなのですが、世界観のどこを切っても妙なクセがある。それが気味悪いような甘美なような形容しがたい魅力を放っていると感じました。先鋭的なんだけど退廃的というか。

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自分の専門分野と関連する感想もあったので書いておきます。

バッターは世界に巣食う悪霊(敵)を粉砕し、白く清潔で淀んだところがない形へと「浄化」していきます。しかし浄化された世界は無味乾燥なフィールドであり、その度を超えた漂白具合は恐怖を覚えるほどです。それを見て思い出したのが芸術分野ではスタンダートとされている「ホワイトキューブ」の暴力性でした。

敵である悪霊が跋扈する浄化前の世界は先ほども述べたように、先鋭的なようで停滞した坩堝のようなイメージを受けます。しかし浄化された後は専用BGMも相まって、世界の一切の魅力が消え去ってしまったように感じるのです。

 

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ホワイトキューブは作品本来の魅力を最大限引き出すために考案された、床から天井までを真っ白に染め上げた直方体の空間のことで、現在の美術館やギャラリーでは展示空間のスタンダートとされています。しかしそうした徹底した無個性な空間と釣り合う為には、作品にも強烈な個性が求められます。だから分かりやすい個性を十分に発揮できていない例えば素人作家の作品などは、ホワイトキューブではなく喫茶店の戸棚など、ある程度雑音のある空間に置いた方が映えたりするものです。

 

そして本作OFFの世界におけるあらゆる要素も、浄化された世界には不釣り合いな、ホワイトキューブを拒絶する弱いオブジェクトという印象を受けます。しかし弱いオブジェクト=無価値というわけではない。浄化を遂行するBatterが終盤怪物じみて見えてくるように、行き過ぎた白さは暴力的ですらある、そんなことに気付かせてくれる作品だと思っています。(さよ教の最初でもそんな文章があったような)

 

 

ただ何しろ古いゲームということもあり、テンポの悪さが難点として挙げられるかもしれません。ランダムエンカウントを採用していたり、ツクールの仕様上消去できないコマンドが邪魔だったり、主に戦闘部分で難があると言えるでしょう。

それでも発表後10年以上の時間的ラグと、フランス語からの翻訳という言語の壁を越えて、未だに支持されるのにはやはり理由があるなと感じられるだけ、各所に示唆的な内容が含まれています。

 

 

あとこれは蛇足だと自覚の上で書きますが、淫夢クッキーBB劇場で本作をオマージュしている【オフッside:DIYUSI】というシリーズがあり、ゲームを一周クリアしてから見ると非常に優れた派生作品だとわかります。淫夢MADに抵抗の無い方は合わせて触れてみてください。(実はこのシリーズの最終回がランキングに上がってきたのを偶然見かけて自分はOFFを発見しました)

 

 

今回の報告は以上です。長文になってしまいました。